神経ブロック

神経ブロック
  

 神経ブロックには、たくさんの種類がありますが、神経またはそのそばに注射をして、神経の働きを一時的、あるいは永久的に休ませて、病気を治す治療法のことです。そのうち当院では、局所麻酔薬を使用し、一時的に神経を休ませることで、自己治癒力を高める神経ブロック療法を中心に診療をしています。副作用を伴うステロイド剤は、なるべく使用しないようにしています。
 「痛み」が発生すると、自律神経のひとつ「交感神経」が緊張していまい、毛細血管は収縮して血行が悪くなってきます。ところがこれは痛みを治すためには困ったことで、血行を良くしないと痛み物質が滞り、炎症は治りにくく、痛みはどんどん強くなってしまいます。そして、自律神経失調症をまねいてしまう原因ともなります。
 神経ブロック療法には、血行を良くする働きがありますので、この痛みの悪循環を断ち切ることができ、治癒を促進するのです。
 当院では、「星状神経節ブロック」と「腰部硬膜外ブロック療法」を中心に治療しています。

 

   ●    「星状神経節ブロック療法」

   ●    「腰痛硬膜外ブロック療法」




「星状神経節ブロック療法」



 ペインクリニックで、最も多く行われている神経ブロックです。のどにある交感神経を一時的にゆるめ、ヒトが本来持っている自己治癒力を高める治療法です。自律神経、ホルモン分泌、免疫力(抵抗力)のバランスを整えますので色々な症状や病気に有効です(表.星状神経節ブロック療法の適応)。
 のどには星状神経節といって、脳・顔面・頭部・頚部・上肢・心臓・肺などに交感神経の細い線維を送っている(支配する、といいます)交感神経の「中継所」のようなところがあります。この星状神経節のそばに局所麻酔薬を注射し、交感神経の働きを一時的にブロックするのが「星状神経ブロック療法」です。この療法をすると、局所麻酔薬が効いている間、脳を初めとする支配領域の血行がよくなり、機能低下していたさまざまな器官が機能回復するのを助けます。そのため、痛みや様々な症状が楽になってくるのです。
 星状神経節ブロック療法の特徴は、繰り返していくと脳の視床下部の機能が改善され、自律神経、ホルモン分泌、免疫力(抵抗力)のバランスが整い、自己治癒力が高まってくることにあります。そしてその改善した自己治癒力により、体中のさまざまな病気が治っていくといわれています。
 たとえば、ストレスにより自律神経のバランスが崩れると、さまざまな病気が引き起こされることは、よく知られています。胃・十二指腸潰瘍、高血圧症、気管支喘息、不眠症、うつ状態、過敏性腸症候群などが有名です。星状神経節ブロック療法は自律神経のバランスを整えますから、このような痛み以外のストレスによる病気にも効果が出てくるのです。
 ですから、頭痛を治そうと治療を開始したところ、胃腸虚弱、冷え性、易疲労、腰痛、花粉症、耳鳴り、便秘、魚の目など目的以外の症状がたくさん改善したということはしばしばあり、たいへん喜ばれています。
 また、副作用がないことも「星状神経節ブロック療法」の特徴です。老若男女を問わず、妊娠中の女性でも、ほとんどの方が治療を受けることができます。
 ただ時々、ブロック注射のあと、声がかすれる、ものを飲みこみづらい、注射した部位が痛い、腕があがらない、といった症状がみられることがあります。これらは、一時的なものですから心配はいりません。だいたい1〜3時間で、もとにもどります。のどにはいろいろな神経があるため、少しだけ局所麻酔薬が流れていくことによります。


  −実際の治療方法

1) 治療ベッドの上に、あおむけに寝て、下あごを前に突き出します。ネックレスははずし、ネクタイはゆるめます。

2) 医師がのどを消毒し、安全のため指でのどを押し、約2.5cmの細い針を刺します。このとき、チクッと感じる程度の痛みがあります。さらに、局所麻酔薬が入るとき、ズーンと響くような感じがありますが、いずれも強い痛みではありませんので、ご安心下さい。注射は10秒程度で終わります。

3) 針が刺さっている間は、ツバを飲み込んだり、声を出したりしないようにします。

4) ブロック後は、止血棒を押さえ、完全に血が止まるまで圧迫します。

5) 治療後、約30分間はベッドの上でゆったりリラックスをして休んでいただきます。

 星状神経節ブロック療法について、もっと詳しく知りたい方は、『星状神経節ブロック療法』(著:若杉文吉、発行:マキノ出版)をお読み下さい。


 

  

   ●    表.星状神経ブロック療法の適応





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